天外伺朗さんメルマガ:投票率の低下は「後期自我」から「成熟した自我」への移行の現れ

投票率の低さに対して前向きな考えが述べられている。

CDやAIBOを開発した元ソニー上席常務で、工学博士(東北大学)の天外伺朗さん(本名:土井利忠)さんのメルマガを転載するよー。

メルマガ本文を読む前の事前知識として: シャドーはペルソナの影

心理学では、演じている表面的な人格(たとえば「立派な社会人」)を「ペルソナ(仮面)」と呼ぶ。
自らを律するときに、当然不都合な衝動や性格を常に抑圧しなければいけないが、それは無意識のレベルにどんどん蓄積され、心理学で「シャドー(影)」と呼ばれるモンスターに育つ。

シャドーが強いと、戦っていないと精神は安定しないので、どうしても「戦う人生」になる。

『問題解決のための瞑想法』天外伺朗より

天外レポート No85(2015.01.01)

 
 
 明けましておめでとうございます。

 昨年末の総選挙では、歴史的な低投票率が記録されました。
おそらく今後、よほど関心の高いトピックスが俎上に上がらぬ限り、投票率は低下を続けるでしょう。

 それは、嘆くべきことではなく、社会の自然な進化だと私は考えています。そして、投票率が30%を切った時、人々はようやく「議会制民主主義」が社会を治める制度として終焉に近づいたことに気づくでしょう。

 社会の進化というのは、人々の意識レベルの進化に支えられていますが、いまちょうど「後期自我」中心の社会から「成熟した自我」中心の社会へと移行しようとしております。

「後期自我」の特徴は下記の通りです。

① 誰かに依存することなく、独立した自我が確立できている。

② 理性で自分を統御して、「立派な社会人」を演じることができる。

③ 抑圧されたシャドーの投影から行動のパターンが出てくる。

④ 戦っていないと精神が安定しない。

⑤ すべてを「正義と悪」の構図で読み解こうとする。

⑥ 自分と違う意見や価値観に違和感を覚え、説得しようとする。

⑦ 自己顕示欲が強い。

⑧ 理性至上主義。合理性、論理を重んじる。

 議会制民主主義というのは、まさにこの後期自我の特徴に立脚しています。自己顕示欲が強く、戦いが得意な人が立候補しますし、すべての議論が「正義と悪」のパターンの中で激しく戦われます。
色々な意見がそのまま共存することは許されず、多数決で一つの意見に全体を染め上げます。

 意識レベルの次の段階「成熟した自我」は、シャドーの自我への統合がある程度進んだ段階です。そうすると、戦わなくても精神は安定しており(戦いたいときには戦うことはできる)、上昇志向が減り、「いい・悪い」を
判別せずに現状をそのまま受容するようになり、多様性を受け入れ、自己顕示欲が減り、論理より情動を大切にします。

 東日本大震災のボランテイアに行った若者と話していると、このレベルに達している人が増えている印象を受けました。

 やはり人類は、少しずつですが着実に進化しているようです。

 成熟した自我に達すると、自己顕示欲が低いので立候補しなくなります。

 候補者はみんな後期自我なので、ちょっとうっとうしいと感じてしまい、投票する気が失せるでしょう。したがって、社会が進化するとともに投票率はどんどん下がるのは必然的なのです。

 そうだとすると、「議会制民主主義」に代わる、次の社会システムの設計にそろそろ着手しなければならないのですが、それに気づいている人はほとんどいません。

 私は、このような社会の進化に基づいて、「次の社会システム」のたたき台を作り、『GNHへ』(ビジネス社、2009年)という本を書きましたが、ほとんど反響はありませんでした。
 今後、活発に議論されるといいな、と思っています。

 さて「次の社会システム」はさておき、投票率の低下という身近な現象にも「社会の進化」という、とてつもなく大きな潮流が隠されていることに注目してください。

 私たちの一生は100年にも満ちませんが、社会というのは数百年、数千年単位の「うねり」の中で動いているのです。

 その「うねり」は、あまりにも大きいので
私たちは気づきません。明日も昨日と同じように進行すると思っています。
 「うねり」はたゆまなく動いているのですが、ちょうど地盤のひずみがたまりにたまって、ある日突然地震が起きるように、突然社会が大きく変わるように感じられる時があります。
 私は、いま日本の社会はちょうどそのような激動の時代を迎えているように感じています。

 中世から近代文明社会に移行するときには、人々の意識レベルが、依存の残った「中期自我」から「後期自我」へと成長したことが、
変革の原動力になったことが知られています。
それは約300年をかけた移行でしたが、それまでの数百年に比べれば極めて激しい変化でした。

 いま、それと同じように「後期自我」から「成熟した自我」への移行の途上にあります。
 「成熟した自我」の人口が増え、いまの社会体制の枠組みではにっちもさっちもいかなくなった時、枠組みががらがらと崩壊して、私たちが今まで知らなかった新しい社会体制に移行するはずです。
 その時代の体制が何と呼ばれるか、それは100年後か200年後の歴史家の仕事です。
 投票率が30%を切るのは、10年か20年待てばいいでしょうが、体制の変革にはまだ50年、100年かかるかもしれません。

 しかしながら、社会の枠組みが変わる前でも、「成熟した自我」の人口比率は着実に増えており、社会は底辺から変わっていきます。
 私がいま進めている「医療改革」、「教育改革」、「経営改革」などは、すべて人々の意識が「後期自我」から「成熟した自我」へと移行する事を先取りしています。

 従来の常識的な企業経営を「合理主義経営学」、「管理型マネジメント」などと呼んできましたが、これは「後期自我」の特徴がよく出ています。
 IT技術を駆使して、合理的に利益を追求し、経営者が先頭に立って戦う、というスタイルです。経営者は、葛藤のエネルギーを戦いの
エネルギーに昇華して、「管理」中心のマネジメントを実行します。

 一方、いま「天外塾」でお伝えしている「人間性経営学」、「フロー経営」などは、社員を信頼してすべてを任せてしまう経営スタイルなので、先頭に立って戦っていないと精神が安定しない「後期自我」の経営者は、頭で理解しても実行できません。
 
「天外塾」では、経営者の葛藤を解消して「成熟した自我」に成長するお手伝いをしております。人間的に成長することによって、ごく自然に「フロー経営」が実行できるようになります。

 このことは、ソニーの創業者の井深大さん、昨年亡くなった未来工業の創業者の山田昭男さん、ネッツトヨタ南国の創業者の横田英毅さんなど、身近に接した名経営者がすべて「成熟した自我」に達しておられたことから、確信を持って言えます。

 社会全体の大改革には、まだまだ時間がかかりそうですが、あなたの会社がいち早く時代を先取りして、あなたも社員もハッピー、業績も自然に上がる「ホワイト企業」に変身することはできます。
 
 
 2015年を迎えて、今年は一つチャレンジしてみてはいかがでしょうか。

 

さて、以下はお知らせです。

1.天外塾(東京)現在募集中のセミナー

① ネッツトヨタ南国、横田英毅さんによる特別セミナー(第9期)

――「教えないから人が育つ」――
第1講2015年1月16日(金)
「一番大切なことは何か」
――成功する秘訣は問題を発見して解決すること――

第2講2015年2月13日(金)
「戦略としての人材開発」
――できない理由を探さない集団の実現に向けて――

第3講2015年3月13日(金)
「人が輝く人間性尊重の組織づくり」
――働く喜びと人間力――

 ネッツトヨタ南国は、第1回「ホワイト企業大賞」を
受賞されました。社員の幸福を最優先に考える横田英毅さんの
フィロソフィーは、日本中の企業経営者の目標になるでしょう。
 社員が幸福な企業は、業績も飛びぬけてよくなります。

 横田さんご自身は『会社の目的は利益じゃない―
誰もやらない「いちばん大切なことを大切にする経営」とは』
(あさ出版)を上梓され、ますますパワーアップ、とても
わかりやすい説明が好評です。
 
  天外は、『教えないから人が育つ―横田英毅のリーダー学』
(講談社)を上梓し、横田英毅経営学を深層心理的視点から
深く分析、サイドから横田さんの講義をサポートします。
  二人のコラボは、天外塾入門として最適なだけでなく、
天外塾卒業生にも受講をお薦めします。

②天外塾(2015年度前期生)

日程は、2015年4月10日、5月15日、6月12日、
7月10日、8月28日、9月11日の全6回(いずれも金曜日)。

③ 「原田隆史の熱血教育塾」(第2期)
第1講 4月17日 「仕事と思うな人生と思え」
第2講 5月29日 「一寸先は、光です」
第3講 6月19日 「タイミング、イズ、マネー。今がその時」

ほとんど破綻していた大阪市内の中学校で、陸上部を指導し、
7年間で日本一を13回達成。地域的に荒れており、暴力、売春、
麻薬が横行する中で、「刑務所にいる父ちゃん母ちゃんに、
日本一になった自分の姿を見せたい」と、あまたの子どもたちを
目覚めさせ、素晴らしい人生に導いてきた原田さんのセミナーは、
教育関係者だけではなく、すべての人の心に大きなともしびを
ともすでしょう。

④  「フロー体験」に接地するためのインナーチャイルド・ワーク(第3期)
第1講 2015年2月27日(金)(楽しい体験・つらい体験の瞑想)
第2講 2015年3月27日(金)(フォーカシング瞑想)
第3講 2015年4月24日(金)(インナーチャイルド・ワーク)
 これは、「フロー」に入るための自己改造ワークです。「フロー経営」を
実行したり指導したりするためには、まず自分自身がしっかりと
「フロー体験」をしていなければいけません。しかしながら、
多くの人が幼少期のつらい体験を通じて情動に蓋をしてしまい
「フロー」に入れなくなっています。
このワークショップは、幼児期に遡ってそれを解消します。
天外塾2009年以降の卒業生のみが対象です。

⑤ 親子の葛藤を解消するワーク(第3期)
第1講 2015年5月22日(金)(親殺しの瞑想)
第2講 2015年6月26日(金)(内観瞑想)
第3講 2015年7月24日(金)(リバーシング・ワーク)
多くの人の多くのトラブルの底に、じつは「親子の葛藤」が潜んでいます。
それに対する的確なアプローチにより、人生は見違えるように変わります。
後継者問題に悩んでおられる方にもお薦めです。
天外塾2009年以降の卒業生のみが対象です。

⑥ 経営者のための運力強化ワーク(第5期)

第1講 2015年9月25日(金)(「死」と直面するワーク)
第2講 2015年10月23日(金)(ハイア―セルフと出会うワーク)
第3講 2015年11月27日(金)(「感謝の祈り」のワーク)
 
 これは、2011年から始めている「運力強化」のためのセミナーです。

 名経営者と言われるような人は、
往々にして大病を経験しています。
 それは偶然ではなく、大病により
死と直面し「意識の変容」を起こすからです。
 
   このワークショップは、大病にならずとも同様な
「意識の変容」へ向かう方向性を持っています。

できれば毎年の受講をお薦めします。
天外塾2009年以降の卒業生のみが対象です。

⑦「フロー経営」のためのリーダーシップ研修(第2期)
―――AI(Appreciative Inquiry)、OST(Open Space Technology)の実践的演習―――

日時:2015年10月17日9時にJR逗子駅に集合、もしくは9時半に現地集合
     18日17時解散(1泊2日、場所:佐島マリーナ)
     フォローアップセミナー 11月20日 10-17時(場所:国際文化会館)
講師:八木陽一郎、天外伺朗

  概要: 横田英毅さんや故・山田昭男さんのように、指示・命令を
しないで従業員の自主判断にまかせる「フロー経営」は、
何もしていないように見えて、じつはリーダーの心のありようで
結果は大きく違ってくる。

      天外は「長老型マネジメント」「存在のマネジメント」などと呼んできた。
それが出来るためには、重篤な病気を克服した体験、もしくは幼少時に
誰かに「無条件の受容」を受けていたことなどが必要なことがわかっていた。
しかしながら、病気も「無条件の受容」も体験していない普通の経営者に、
どういうトレーニングを施せば、横田さんや山田さんに近づけるかは、
まったく見当がつかなかった。

      今回実習する「AI」「OST」などは、いま世界的に注目が集まっている
最新のポジティブ組織開発の方法論だが、そのファシリテーターのあり方は
「存在のマネジメント」そのままだ。それを身につけることができれば、
「フロー経営」に一歩近づけるだろう。

      ともすると、「俺についてこい!」式の古いリーダーシップしか世の中には
知られていないが、それとは180度方向が違う新しいリーダーシップのあり方と、
それによる集合的なパワーが燃え上がる様子に多くの受講生は開眼するだろう。
僅か2日間だが、これが「フロー経営」のエッセンスだ。

      「長老型マネジメント」の語源は、「プロセス指向心理学」の集団ワーク
(ワールド・ワーク)におけるファシリテーターの人間的特性を、ミンデルが
インディアンの長老になぞらえたことによる。
「AI」「OST」との共通性が見られる。

       講師の八木陽一郎氏は、香川大学教授の立場で「AI」発祥の地、
ケース・ウエスタン・リザーブ大学の大学院に客員研究員として派遣され、
AIによる組織開発の研究に取り組んでいたが、父親の事業を急遽継承するため
2013年3月に帰国された。
山田塾、横田塾、天外塾を受講され、また破綻寸前の事業も短時間に建て直された。
この実習には最適な講師だと確信している。

 八木 陽一郎(略歴)  香川大学大学院地域マネジメント研究科客員教授(2013年3月迄)、
南山大学大学院人間文化研究科 非常勤講師(2014年度)、
ユニティガードシステム(株) 代表取締役社長
元香川大学大学院教授。慶應義塾大学大学院客員教授、
ケースウェスタンリザーブ大学客員研究員を歴任。
リーダーシップと組織開発を専門とし「内省と対話」をキーワードに研究・教育活動を展開してきた。
2013年に急遽家業を継承することとなり、現在は経営者として実践の道を歩みはじめている。
経営学博士(慶応義塾大学)。主著「内省とリーダーシップ」(白桃書房)。

① ~ ⑥の場所は東京、六本木の国際文化会館です。
 
上記、① ~ ⑦のセミナーの「お申込みフォーム」です。
https://www.officejk.jp/category/1327009.html

2.愛媛天外塾が2015年に開講します
日程は、2015年4月3日、5月8日、6月5日、7月3日、8月7日、9月4日

こちらの主催は、(株)office JKではなく、
マミーズファミリー(TEL:089-947-7881、 FAX:089-947-7880 )です。
下記イベントページをご参照ください。https://www.facebook.com/events/304525186410234/304525189743567/?notif_t=like

3.教育関係の講演会

①テーマ「“人が育つ”とはどういうことか」
– 人の成長について探究し続けている方のための150分 –

・講演者:
炭谷俊樹( 神戸情報大学院大学学長)
西村勇哉(NPO法人ミラツク代表理事。ファシリテーター・プロセスデザイナー)
 天外伺朗(作家、元ソニー上席常務)

・開催日時
2015年1月24(土) 13:00開場 13:30開始 16:00終了

・開催場所
神戸情報大学院大学研究教育棟4F
(「神戸電子専門学校・学生会館」の8階建てビル)
神戸市営バス「加納町3丁目」バス停前

・お申込み方法
下記のフォームよりお申込みください。
https://ssl.kokucheese.com/event/entry/240080/

②「生きる力」講演会
2015年11月29日 長崎
(主催:菜の花保育園 TEL:095-878-2877 FAX:095-878-5180)
講演者:
青山繁(保育園大地)
石木和子(菜の花保育園)
福田泰三(小学校教諭)
原田隆史(原田教育研究所)
天外伺朗

③その他、沖縄、東京、愛媛、札幌など詳細を詰めています。

4.ホロトロピック関連
(主催:ホロトロピック・ネットワーク info@holotropic-net.org
 TEL:070-2209-3128)
ホロトロピック・ネットワークは昨年9月より運営体制が変わりました。
年会費が必要な会員制度はなくなり、無料のメルマガ会員と
イベント会員(最初の一回だけ入会金)になりました。
どうぞお気軽にお申込みください。

☆2015年1月13日(火)「山本光輝さんいろは呼吸書法会」東京ウィメンズプラザ
                  
☆2015年1月18日(日) 「大阪ホロトロピック・ワールド 」マイドームおおさか
講演者:船戸隆史、天外伺朗
☆2015年2月4日(水)「天外伺朗の新春瞑想の会」 紫山会館
☆2015年3月20(金)〜22日(日) 「天外伺朗の瞑想断食会」@フフ山梨
☆2015年4月5日(日)「ホロトロピック・ワールド」 東京ウィメンズプラザ
 講演者:隂山康成さん アシリ・レラさん 天外伺朗他 

5.フロー・インスティテュート関連
(主催:フロー・インスティテュート 
https://www.flowinstitute.jp/
info@flowinstitute.jp)

① 2015年1月17日(土)13時、第1回ホワイト企業大賞授賞式
       (東京、国際文化会館)
② 2015年2月28日(土)フロー教育シンポジウム
     講演者:平川理恵(民間人初の公立中学の女性校長)、
天外伺朗 他
     (東京 国際文化会館) 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
以上

天外伺朗
(どうぞご自由に転送、引用して下さい)
officejk@onyx.ocn.ne.jp

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