ダニエル・ピンク著『ハイコンセプト 「新しいこと」を考え出す人の時代』より
アメリカ・ボルチモアのジョンズ・ホプキンス大学にあるベイビュー・メディカル・センターには8つの同心円からなる迷路がある。
赤色のレンガが敷き詰められた地面。
白色のレンガがラインを作る。
壁はない。
外側から中心に向い、歩く。
迷路には鎮静効果がある。
左脳思考を封じ込め、右脳を解放する。
左脳が通路を歩くという行為を論理的に進める間、右脳は自由に創造的な思考をめぐらすことができるのだ。
掃除や多くの洗い物をしている時にポジティブな状態になり、パっと閃くことがあるのと同じ状態なんだろう。
自分の実例を出そう。
オリジナル楽曲の『恋心』。
まずメロディーの土台が大量の洗い物をしている時に作られ、次に石垣島へ訪れた際に頭の中で映像が入って8割完成し、再び大量の洗い物をしていた時に細部を言語化して完成させた。
大量の洗い物に感謝。
【伐娑羅 -BaSaLa】
Vocal & Djembe: Kackey@dabigtree
二胡: 木村ハルヨ
Vocal & Guitar: Michael
話を本に戻す。
迷路のそばには変色した黄色いノートが二冊。
迷路を歩き終えた人たちが思いを書き込む。
このノートは迷路を訪れる人に慰めと意義の感覚を与えている。
医師や看護師たちも、辛く苦しい経験をした後でここを訪れ書き記した。
手術を受ける患者の家族はここで祈り、考え、気を紛らわしたと綴っている。
患者本人が記した感動的な物語もある。
筆者自身もここで手術を受けた後に迷路を歩いた。
そしてこのノートに書き記したすべての人の魂と一緒になった。
筆者がこの迷路を歩きながら心に念じた言葉は「信じる」だった。
新しい未来を信じる。
置かれているノートは一つのソーシャルネットワーク。
共感を共有する場。
これもゲーミフィケーションといえるんじゃないだろうか。
素晴らしいのは意図してこの迷路が作られたということ。
共感する力。
共感によって引き出される力。
わたしたちにはそういう機能が備わっている。